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─ 誰かのために 祈ること ─ 大人に贈る絵本 『 はじまりの日 』 by lifesize

投稿日:2017年3月4日 更新日:

はじまりの日

人というものは、日頃、自分の願いを満たすことに、どうしても懸命になりがちだ。
他人から好かれたい、不自由なく暮らしたい、カッコよく、美しくありたい ─ 。
もちろん、願いを持つのは悪いことじゃない。

その願いがあってこそ、充実した日々を送ることができる場合だって、たくさんある。

でも、ふと思うときがあるんだ。

心ない誰かに傷つけられて、笑顔を失くした人を見たとき。
救急車に乗せられる人を見送りながら、ひどく不安そうに、両手を固く握りしめている人を見たとき。
いつもは快活な人が、言葉なく、何かに思い悩んでいるとき。
病気と闘いながら、それでも懸命に生きている人を知るとき。
不自由な暮らしを送りながらも、決して笑顔をなくさない人に出会ったとき ─ 。

自分の願いが、なんだかひどく小さなことに思えて、その人たちのつよく真摯な願いが、どうか叶いますようにと、願っている自分がいる。

ニュースを知れば、もっとひどいことが、いくらでも耳に入ってくる。
貧困、飢餓、紛争、テロ、殺人…。自分ひとりがどうにかできることなんて、ひとつもない。
だから、できることは、自分の手の届く範囲の、ほんの少しのことだけだ。
そのひとつに、自分ではないほかの誰かのために願う・祈るということがあっていいんじゃないかと、思ったんだ。

 

『 はじまりの日 』という絵本がある。

2016年10月。ノーベル文学賞が、ひとりの音楽家に与えられることになり、その報道が世界をかけめぐった。
その彼 ─ ボブ・ディランの作品のひとつ 『 Forever Young 』の歌詞が日本語に訳されて、絵本になったものだ。
元々この歌詞は、彼が自分の息子のことを思って1974年に発表した。

原語の歌詞は、こう始まる。
May God’s bless and keep you always
May your wishes all come true

れを、日本語にも英語にも精通したアーサー・ビナードが訳した。ひどく印象深く感じたのが、この一文目だ。

「きみが 手をのばせば しあわせに とどきますように」

「きみのゆめが いつか ほんとうに なりますように」

父は息子への思いを続けて書く。
まわりの人々と助け合えるように。約束を守って、嘘を嫌うことができるように。
背をまっすぐ伸ばして、いつでも勇気がもてるように。
流されることなく、流れをつくることができるように 、と願いを綴り、
そして、
「毎日は きみの はじまりの日」 だよ、今日も明日もね、と締めくくる。

彼は、自分の子をおもって書いたけれど、ここにあるいくつもの願いは、誰にとっても、自分のたいせつな人に願うことと、きっと同じだ。
誰だって、自分らしく生きられたらいい。

多少の不自由はあるだろう。それでも、
「きみが 手をのばせば しあわせに とどきますように」と、誰かのために祈ることは、性別も、年齢も、立場も関係なく、自分ができることのひとつに間違いないはずだ。
そう思わせてくれたこの絵本を読んで、あなたが思い描くのは、誰だろうね。

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